黒紙を巻かれた謎の「五大シャトー」


さて、オーラスの2本は懸案の「五大シャトー」。モノはなんだかわかりません。
スドウ氏は場をもりあげるために、この2本に黒紙を巻いていました。
「今回は僕もブラインドに参加します。さ、みんなで利いてみましょ」

最初にグラスに注がれた「黒1号」は、なんとなく状態があまりよくない
と思われました。劣化まではいかないが、すでにピークをすぎてしまった
ような、微妙においしくないフレーバーが感じられました。そのせいか、
本来の味がみえにくく、かなり混乱しましたが、まあポイヤックかな、と。ただし……
(まてよ……。たしか70年代といえば、ムートンの出来が全般にイマイチだった年なのでは……。このワインはちょっとピークを過ぎてヘタれたカンジもある。
とすると、こいつはムートンか!)というデータが頭の中を駆けめぐります。ワインは情報で飲むのモノではないとわかっていながら、手がかりがほしいあまり、つい……。

続いて2本目。
これは飲んだ瞬間、インクのように濃く、土、紫の花、ミネラル、鉛筆、チェリー
何種類かのスパイスがあって……。「あ、こりゃあオー・ブリオンだ!」と
早々と自分のなかで結論がでました。ちょっとオー・ブリオンにしてはボディが厚みがあるような気もしたんですが、かといってポイヤックにしては柔らかすぎるし……。森の奥の苔むしたカンジは、たしか去年飲んだオー・ブリオンの古酒(ただし80年代)に感じたような気も……。少なくとも、ポイヤックのワインじゃないような気がしたんです。クレームド・カシスってんでもないし、あまりバニラっぽくもないような……。
ええいっ! ここのところメドックの90年代以降はブラインドでほとんど当てていたので、フン、と鼻を膨らませて、ここはともかくオー・ブリオンでいってみよう、いうことになりました。したがって亜樹の結論は、
1本目→シャトー・ムートン  
2本目→シャトー・オー・ブリオン

。これはかなり、自信を持って提出した答でした。

   
……がっ!
ムッシュ・スドウがべりべりっと黒紙をひき破いてボトルの全貌をあらわ
にすると……。1本目はシャトー・ラフィット・ロッチルド。そして2本目
は、なんとムートン・ロッチルドだったのであります。

↓シャトー・オー・ブリオン