ジャッキー・トルッショ・マルタンを利く
先日もちらりと名前を書きましたが、「アンリ・ルブルソー」
と同じく「自然派の小さな農家の優れたワイン」として、
とあるジャーナリストの著作に紹介されていたのがこの
ジャッキー・トルッショ・マルタンです。
ルブルソーさんと同様、あまり日本では流通していないようですね。
なんか、ルブルソーさんの特級畑(うまかったなあ!)を利いてからムショーに
「小さい農家の良質な自然派ワイン」を連続飲みしたくなり、
2年ほど前に購入してやや高めの温度で寝かせておいた
ジャッキー・トルッショ・マルタン「シャンボール・ミュジニィ・
プルミエクリュ(1級畑) レ・センティエ(サンティエ、と書くヒトもいるようです)」の栓をあけました。
モレ・サン・ドニに本拠を置くこのドメーヌの主・ジャッキーさんは
いま60代ですが、世襲でドメーヌを継がせる気がなく
「オレの代でワイン造りはヤメる」と宣言してるのだそうです。
ワインの味わいは古典的なブルゴーニュそのもの。地元では味に定評があり、
フランスで生産量のほとんどが(一説によると、9割もが)消費されてしまうため、
日本ではほとんど見かけることがありません。しかし、そこは情報通の日本人、
ここのワインが美味いことを知っているマニアは少なくなく、最近ではチョコチョコと
ネット等で売られてもいるようです。(亜樹もそれで入手できた幸運なユーザーの
ひとり、というわけです)
さて、99というブルゴ-ニュのグレイト・ビンテージで、
地元でも手練という評判のトルッショのワイン。すごくたのしみです。
どうかな──?
グラスに注いでまずビックリしたのは、ワインの色が薄いことです。
高めの温度で保存したせいもあり、いささか茶系がはいっており、
全体的には澄んだローズ色といったカンジなのですが、
ともかく薄く、はかなげな色です。
ところが……飲んでみると「うわっ、濃い!」
と、思わず声に出してしまいました。
まいった、色に騙されました。はかなげな色からは想像もつかない果実味、
優美だが力強いテロワールの特徴が色濃くでており、複雑なアロマも。
いくぶんタンニンの主張が強すぎますが、
それは2時間もすれば、この繊細にして骨太なワインに
ゆっくりと溶け込んでくれるでしょう……。
仕事をおえた4時間後、ふたたびこのワインをセラーからとりだして、
飲んでみました。
タンニンはすっかり丸くなり、果実味、アロマ、複雑味がひとつの
協奏曲のように響きあい、えもいわれぬ調和を醸しだしています。
う〜〜〜ん、ワインって、ゲージツだなあ。
しかし、これだけのワインを造るドメーヌが、現オーナー限りで店じまいとは、
なんとも寂しい限り。
日本でいうと明治の気骨男を彷彿とさせるジャッキーさん、
できればヴォーヌ・ロマネ村の「神様」よろしく
80過ぎても現役で、遠く東洋の消費者をもうならせるワインを
造り続けてほしいものです。
- 作者: オキモト・シュウ,亜樹直
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