アンリ・ペロ・ミノを利く


シトシト降る雨の音を聞いているとなぜかブルゴーニュ
を飲みたくなるものです。みなさんは、そういう気分って、ありませんか?

……てなことで、お天気の悪かったある日の夜更け、
セラーを開いてワインを物色していたら、アンリ・ペロミノ
モレ・サン・ドニ一級畑 ラ・リオットv.v.97年
「飲んでくれ」といわんばかりの顔をして横たわっている
じゃありませんか。んー、ヨシヨシ、うまそうです。


慢性品薄で人気のあるこのドメーヌ、実際にワインをつくっているのは
90年代前半からはアンリではなく、息子のクリストフだったと記憶しています。
世代交代ってやつです。

クリストフは手堅い作り手だったという父アンリのやり方を踏襲せず
独自の方法でワインづくりを行っています。
たとえば低温マセラシオン、徹底した低収穫量、
ノロジスト(醸造家)の登用
など……。


結局まあ、才能があったんでしょうね。「藍より青し」というやつで
父親の代よりも、この蔵はがぜん評価をあげたというわけです


代替わりを見事に果たした新生ペロ・ミノのワインは
しかし「10年待たないと飲めない」といわれるほど長命だそう。
97年というと、まだ8年ですが……でも、97年はそれほどグレイトな
年ではないから、きっと大丈夫。大丈夫でなくても、飲んじゃおう……。


かたぁーーーいコルクを抜いて、待つこと1時間半。
ラ・リオットはモレ・サンのちょうど中央部にある畑で、
モレ・サンらしい特徴を表現しているといわれますが、
97年という生産年のせいなのか、なぜかシャンベルタン的というよりは、
シャンボール的な第一印象です。
しっかりした酸味の奥に、ためらいがちな赤い果実の香り……。
そう、まだ熟れる前の、サクランボ、野生のベリーの味わい。
利いていると、ワインの奥へ奥へと入り込んでいきたくなるような
生き生きとしているけれど奥深い味わい──。


静かで深遠、それでいて躍動的な
そう、あたかもショパンピアノ曲を聴くような、
しっとりとした気分で……、秋の夜長に酔いました。
やや酸味が強かったのは、ビンテージの影響なのか、
やはり飲むのが早すぎたのか、どちらなのかちょっとわかりません。
でもあと5年待てば、より芳醇で、セクシーな味わいになる
ことは間違いないだろうと思います。

神の雫(3) (モーニング KC)

神の雫(3) (モーニング KC)