究極のワイン会…その2

ムッシュ・スドウからの最初の難問──85年白のブラインド・テイスティング
「ローヌ」と「ムルソー」の二択にも関わらず、亜樹の舌は混乱しました。
振り返れば、ムッシュから最初にワインリストをファクスしてもらったときには
「白はこの2つか。そんなら、白は飲めばすぐわかるはず」と、甘く考えて
いたのです。だって、葡萄の品種がそもそも違うんですよ。
ローヌ→ヴィオニエ種
ムルソー→言わずと知れたシャルドネ
そりゃもう、「飲めばワカル」とだれだってそう考えますよね。
←会場の目黒のイタ飯店「T」

しかし、最初にだされた美しく芳醇に熟成した白ワインは
蜂蜜とバター、スイカズラの香りがあり、濃厚で、梨のような品のいい甘味があって、
少し前に飲んだシャプティエの「コンドリュー・ラ・ドリアンヌ」
に似ていたんですよ。ただ、いささか酸味がしっかり骨組みに残って
いるのがちょっと気になったんですが、亜樹は思わず
「これ、ローヌですよね? ネエ、スドウさん」と口に出してしまいました。
ムッシュ・スドウはニマ〜〜と目で笑いながら
「ホ〜ホホホ、相変わらず亜樹さんはせっかちですねエ。
2番目のワインを飲んでから結論だしたほうがいいですよォ?」

エ……?
フト周りを見渡すと、老練なるテイスターたちはグラスをじっとみつめたり
くんくんと匂いを嗅いだり、眉間にタテ皺をよせて、沈思黙考しています。
亜樹、さきほど口に出したばかりの言葉が、不安になってきました。
スドウ氏が「さてでは2番目でえ〜す。ドーゾ」
と、二つ目の白ワインを出してくれます。
さっそくテイスティングすると・・・・・・。
「あっ!」
一口飲んで、思わず声に出してしまいました。
最初の白ワインで、しっかりと骨組みに残っていた品のいい酸味が
この白にはほとんど感じられません。バター味が濃く、最初の白よりも
濃厚で、全体的にインパクトの強い味わいです。
「これだけ酸味が少ないということは……じゃ、まさか2番目がローヌ??」
亜樹の向かいに座っていたマイ・グラス持参の手練のひとりが
小さい声で囁きます。「ハイ、恐らくは」
亜樹「……」



さあてムッシュ、どじゃーんと2本のワインを宙に掲げて、答を明かします。
最初の1本目がムルソーでぇす!」
があーん!やっぱ、そうだったのか!
2本とも、美しく年をとった華麗なる白でしたが、なんというのか
最高の保存環境で20年の歳月を経ると、ワインというのは品種の違いを超えて、
次第に似た顔になってくるのかも、という気がしました。

そんな話をムッシュにしますと、ムッシュ、我が意を得たりという風に大きく頷いて、
「そのとおりですよ亜樹さん。ワインが若いうちは、カベルネピノってぜんぜん
別モノでしょ。でも50年もすると、似た顔になってきちゃうのよね。
フシギなんですけど、それがワインの神秘なんですよ」



なるほど、なるほど。そういうことですか。
ムッシュの見識は、やはり素晴らしい、と感心する亜樹……。
でも、ムッシュが「みんな似ている」なんていうから、その後のテイスティング
ではますます混乱し、何回となく飲んでいるハズの「シュバル・ブラン」の53年でさえ
素晴らしく美味でしたが、なんだかシュバル特有のあの「生クリームの味わい
が感じられず、違うワインのように感じてしまいました。
ポイヤック「グラン・ピュイ・ラコスト」53年(5級ですが、これもメチャうまかった〜!)
との二択でだされたので、からくも「消去法」で当てることができましたが
シュバルを単体でだされたら、的中できなかったかも……。イヤハヤ。


←53年シュバル・ブラン


今回は、85年から53年までとワインの年代の幅も広く
なかなか難しいお題が多かったよう。さしもの手練たちも
かなり混乱していたようです。彼らはその悔しさを次回への闘志にかえて
また、グラス持参でムッシュの会にやってくることでしょう。
ワインのサムライたちは、それぞれに固い握手をムッシュとかわし、
夜の街に散っていきました・・・。


その帰り道、亜樹はタクシーのなかで半分うつらうつらしながら、
こんな俳句を思い出すともなく思い出していました。
酒好きで知られる詩人・久保田万太郎さんの作品です。



『時計屋の 時計 春の夜 どれがほんと』・・・


いやまったく、どれがホントなんでしょうね。ワインの奥深さ、不可思議さに
ますます惹き付けられてしまった一夜でした。

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さて、話は変わりますが・・・・・。
来る9月24日、「ホテル・ハイランド・リゾート」におきまして
神の雫スペシャルワイン会が開催されます。

<日時>2005年9月24日(土)〜9月25日(日) (1泊2日の日程となります)
<料金>28,000円 (1泊2食付 税込み 2名様1室利用の1名様料金となります)
<定員>60名 


←今週号でお知らせ。

亜樹、そして漫画家のオキモト・シュウの、コミック製作裏話やらワインの
話やらを聞いていただきながら、ホテルのシェフの素晴らしいフランス料理
とたくさんのワインたちに舌鼓をうっていただく、という企画です。
ワインのラインナップは、なんとあの伝説の「モン・ペラ」03年(出ました!
世紀のグレート・ビンテージ03年です!)を始め、
神の雫』に登場した「ボア・カントナック01年」「サン・コム01年」
また、当日までのお楽しみですが、甘いオレンジのアロマが漂う
ジブレイ・シャンベルタン村の幻のワイン(?)も用意してもらっています。
生牡蠣とシャブリの「マリアージュ
シャブリを飲みつつ、実際に体験していただきます。


そして……!
二次会は、なんとあの雫を涙させた「ムートン・ロートシルト82年」もでます。(ホテルの秘蔵品だそうです!)
さらに、これは非公式の予定ですのでブログのみなさんだけにお伝えしますが、
亜樹のセラーから『秘蔵のワイン』もそお〜〜っと
持参しようと思っているんです!
なにかと面白そうなイベント満載のこのワイン会、まだ連休の予定が立っていない方は
よかったらドーゾご参加を。

詳しくはこちら↓

http://www.highlandresort.co.jp/whatsnew/kaminoshizuku.html